賃貸住宅に居住中、気を付けていても壁や床が汚れたり傷が付いてしまったりすることってありますよね。
退去時に必要以上の修繕費を敷金から差し引かれたり、追加で費用を請求されてたりして損をするのは避けたいところ。
……とお困りではありませんか。
賃貸住宅に8戸、のべ20年ほど借り暮らしをしつつ
オーナーとして9年間賃貸経営をしてきた
整理収納アドバイザーのトノエルが、
賃貸アパート・マンションの原状回復への修繕費についてご紹介しますね。
国交省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」
賃貸住宅の修繕に関わる費用負担の指針として
国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改定版)」があります。
これを参考にして、正確な情報をご紹介しますね。
より詳しい情報をお求めの方は、国土交通省のサイトでご覧ください。
この場合は「入居者」or「大家」どっちが負担?
入居者が負担する場合
「賃借人が通常の住まい方、使い方をしていて発生すると考えられるもの」のうち「賃借人のその後の手入れ等管理が悪く発生、拡大したと考えられるもの」
「賃借人の使い方次第で発生したりしなかったりするもの(明らかに通常の使用による結果とはいえないもの)」
……とあります。
具体的には次のような場合は、入居者が費用を負担することになるようです。
床(畳・フローリング・カーペットなど)
- カーペットに飲み物等をこぼしたことによるシミ、カビ(こぼした後の手入れ不足等の場合)
- 冷蔵庫下のサビ跡(サビを放置し、床に汚損等の損害を与えた場合)
- 引越作業で生じたひっかきキズ
- 畳やフローリングの色落ち(賃借人の不注意で雨が吹き込んだことなどによるもの)
- 落書き等の故意による毀損
壁、天井(クロスなど)
- 賃借人が日常の清掃を怠ったための台所の油汚れ(使用後の手入れが悪く、ススや油が付着している場合)
- 賃借人が結露を放置したこで拡大したカビ、シミ(賃貸人に通知もせず、かつ、拭きとるなどの手入れを怠り、壁等を腐食させた場合)
- クーラーから水漏れし、賃借人が放置したため壁が腐食
- タバコ等のヤニ・臭い(喫煙等によりクロス等が変色したり、臭いが付着している場合)
- 壁等のくぎ穴、ネジ穴(重量物をかけるためにあけたもので、下地ボードの張替えが必要な程度のもの)
- 賃借人が天井に直接つけた照明器具の跡
- 落書き等の故意による毀損
建具等、襖、柱等
- 飼育ペットによる柱等のキズ・臭い(ペットによる柱、クロス等にキズが付いたり、臭いが付着している場合)
- 落書き等の故意による毀損
設備、その他
- ガスコンロ置き場、換気扇等の油汚れ、すす(賃借人が清掃・手入れを怠った結果汚損が生じた場合)
- 風呂、トイレ、洗面台の水垢、カビ等(賃借人が清掃・手入れを怠った結果汚損が生じた場合)
- 日常の不適切な手入れもしくは用法違反による設備の毀損
- 鍵の紛失または破損による取替え
- 戸建賃貸住宅の庭に生い茂った雑草
大家が負担する場合
一方、このような場合は、大家さんが修繕費を負担することになります。
床(畳・フローリング・カーペットなど)
- 畳の裏返し、表替え(特に破損していないが、次の入居者確保のために行うもの)
- フローリングのワックスがけ
- 家具の設置による床、カーペットのへこみ、設置跡
- 畳の変色、フローリングの色落ち(日照、建物構造欠陥による雨漏りなどで発生したもの)
壁、天井(クロスなど)
- テレビ、冷蔵庫等の後部壁面の黒ずみ(いわゆる電気ヤケ)
- 壁に貼ったポスターや絵画の跡
- 壁等の画鋲、ピン等の穴(下地ボードの張替えは不要な程度のもの)
- エアコン(賃借人所有)設置による壁のビス穴、跡
- クロスの変色(日照などの自然現象によるもの)
建具等、襖、柱等
- 網戸の張替え(破損はしていないが、次の入居者確保のために行うもの)
- 地震で破損したガラス
- 網入りガラスの亀裂(構造により自然に発生したもの)
設備、その他
- 専門業者による全体のハウスクリーニング(賃借人が通常の清掃を実施している場合)
- エアコンの内部洗浄(喫煙等の臭いなどが付着していない場合)
- 消毒(台所・トイレ)
- 浴槽、風呂釜等の取替え(破損等はしていないが、次の入居者確保のために行うもの)
- 鍵の取替え(破損、鍵紛失のない場合)
- 設備機器の故障、使用不能(機器の寿命によるもの)
普通に掃除しながら普通に生活していて汚れたり壊れたりする部分は、入居者は気にしなくていいということですね。
入居者が負担する修繕費はどのくらい?
それは、修繕が必要な範囲と経過年数が関係してきます。
入居者の負担単位とは
毀損部分の補修は、どの範囲まで行うかということもガイドラインで示されています。
床(畳・フローリング・カーペットなど)
畳
- 原則一枚単位
- 毀損等が複数枚数の場合はその枚数分
カーペット・クッションフロア
- 毀損等が複数箇所の場合は居室全体
フローリング
- 原則㎡単位
- 毀損等が複数箇所の場合は居室全体
……ということで、
- 通常は汚れや傷が付いた部分を㎡単位か畳一枚単位で負担する
- たくさん傷を付けた場合は部屋全体の費用を負担する
……ということのようですね。
壁、天井(クロスなど)
壁(クロス)
- ㎡単位が望ましいが、賃借人が毀損した個所を含む一面分までは張替え費用を賃借人負担としてもやむをえないとする。
タバコ等のヤニ、臭い
- 居室全体のクリーニングまたは張替費用を賃借人負担とすることが妥当と考えられる。
……ということで、
- 通常は汚れや傷が付いた部分を㎡単位で費用を負担する
- 壁一面分を請求されてもしかたない
- タバコの場合は部屋全体
……ということのようですね。
建具・柱
襖
- 1枚単位
柱
- 1本単位
……ということです。
設備・その他
設備機器
- 補修部分、交換相当費用
鍵
- 補修部分
- 紛失の場合は、シリンダーの交換も含む
クリーニング
- 部分ごと、または住戸全体(通常の清掃や退去時の清掃を怠った場合のみ)
……ということです。
賃貸の水回りを快適にするアイデアはこちらをご覧ください。
経過年数とは
賃貸住宅を借りていると、その期間に応じて、通常の使用による経年劣化は当然起こりうることで、そのぶんの費用は入居者はすでに「賃料」として支払っています。
したがって、退去時に修繕費として「新品同等の金額」を支払う必要はないということになります。
そこで、それぞれの修繕箇所において、新品時からどのくらいの期間が経過したら価値がどの程度下がるのか、耐用年数が定められています。
床(畳・フローリング・カーペットなど)
フローリング
補修は経過年数を考慮しない
(フローリング全体にわたる毀損等があり、張り替える場合は、当該建物の耐用年数で残存価値1円となるような負担割合を算定する。)
クッションフロア・カーペット・畳床
6年で残存価値1円となるような負担割合を算定する
畳表
補修は経過年数を考慮しない
……と定められています。
つまり、フローリングについては「部分補修」をしてもフローリングの価値が復活するわけではないため、経過年数を考慮しないということになります。
一方で、「フローリングの全面張替」を施工する場合は、建物自体の耐用年数における経過年数を考慮するとしています。
住宅用建物の耐用年数はそれぞれ、
木造・合成樹脂造 | 22年 |
---|---|
木骨モルタル造 | 20年 |
鉄骨鉄筋コンクリート造 鉄筋コンクリ―ト造 | 47年 |
れんが造 石造 ブロック造 | 38年 |
……と定められているので、フローリングの価値も建物によって決まります。
畳床・カーペット・クッションフロアについては「6年間で残存価値が1円」になるので、例えば、施工されてから3年経過後に修繕する場合は、それぞれの残存価値は新品時の半額ということになります。
一方で、畳表は消耗品であり、減価償却の考えにはなじまないとされているようです。
原状回復可能な床のDIYアイデアはこちらをご覧ください。
壁、天井(クロスなど)
壁(クロス)
6年で残存価値1円となるような負担割合を算定する
……と定められています。
例えば、壁紙が貼られてから3年経過後に修繕する場合は、壁紙の残存価値は新品時の半額ということになります。
なるべく壁を傷つけないのDIYアイデアはこちらをご覧ください。
建具・柱
襖紙・障子紙
- 経過年数は考慮しない
襖・障子等の建具部分、柱
- 経過年数は考慮しない
……ということです。
襖紙・障子紙は消耗品であり、減価償却の考えにはなじまないとされているようです。
一方で、襖・障子等の建具部分はフローリングと同様に、経過年数を考慮する場合は建物自体の耐用年数における経過年数を考慮するとしています。
設備・その他
設備機器
- 補修部分、交換相当費用
鍵
- 補修部分
- 紛失の場合は、シリンダーの交換も含む
クリーニング
- 部分ごと、または住戸全体(通常の清掃や退去時の清掃を怠った場合のみ)
……ということです。
賃貸契約書を確認して大家さんに相談しよう
実際はどの程度まで原状回復すべきなのか、修繕費の費用負担がどうなるのかは、契約書や大家さんとの話し合い次第ということになります。
気になることがあったら、直接貸主に問い合わせてみるのもいいかもしれませんね。
ガイドラインの「Q&A」
抜粋してご紹介しますね。
退去時はもちろん入居時にも賃貸人・賃借人双方が立ち会い、部屋の状況を確認しチェックリストを作成しておくことが大切です。
賃借人に不利な特約は、賃借人がその内容を理解し、契約内容とすることに合意していなければ有効とはいえないと解されています。
賃借人が通常の使用方法により使用していた状態で、借りていた部屋をそのまま賃貸人に返せばよいとするのが一般的です。
部屋全部のクロス張替費用を負担しなければならないのでしょうか?
不注意でキズをつけてしまったものは修理をしなければなりませんが、各部位ごとの経過年数を考慮したうえ、最低限可能な施工単位(毀損させた箇所を含む一面分の張替えまではやむをえない場合がある)で修理するのが妥当と考えられます。
ればいけないのでしょうか?
襖や障子、畳表の損耗が経年変化や通常使用によるものだけであれば、賃借人の負担で張替える必要はないと考えられます。しかし、賃借人が毀損した場合には、賃借人の負担で張替えることになります。
民事訴訟のうち、60万円以下の金銭の支払を求める訴えについて、原則として1回の審理で紛争の解決を図る手続きです。
……参考にしてみてくださいね。
まとめ
賃貸アパート・マンションの原状回復への修繕費について国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改定版)」をもとに
- この場合は「入居者」or「大家」どっちが負担?
- 入居者が負担する修繕費はどのくらい?
- 賃貸契約書を確認して大家さんに相談しよう
- ガイドラインの「Q&A」
……をご紹介しました。
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